2007年8月13日月曜日

脳ドック

知人が脳ドックなるものを受けて、無症候性未破裂動脈瘤が発見された。小さいのでまず半年後に検査をして変化がなければ一年ごとに検査で経過をみていくということになったそうだ。

 脳ドックというのは、外国では行われておらず日本独特のものらしい。日本の調査では無症候性未破裂脳動脈瘤全体としての破裂のリスクは年間1%前後、日本での無症候性未破裂脳動脈瘤の解頭手術成績は、全体として死亡は1%以下、後遺症は5%以下と推定されている。
 日本脳ドック学会のガイドラインでは、5mmよりも大きくて70歳以下であれば手術を勧める、とくに10mm以上のであれば強く勧める、手術しない場合は半年以内に再検査、変化がなければ1年間隔で経過観察を行うということになっている。
 98年、米国の医学誌に『10ミリ未満の動脈瘤の破裂率は0.05%』という欧米の大規模研究の結果が発表され、日本の学会で大騒ぎになったという。この論文は、日本の脳外科医から強い批判を浴びたが、03年には同じグループがより信頼性の高いデータを英医学誌『ランセット』に掲載した。そこでは、脳動脈瘤の大半を占める『前方循環系』(中大脳動脈や前大脳動脈など)の動脈瘤で、7ミリ未満のものの破裂率はゼロ、7~12ミリでも0.5%だった。その後、日本脳神経外科学会が6000例近い症例について調査を続けており、その中間報告では年間1%弱の出血が確認されている。
 もうひとつの問題として手術の後遺症の頻度がある。日本では半身不随や寝たきりなどの重い後遺症だけをカウントしているが、表情の変化や、記憶力が低下したり感情が不安定になる高次脳機能障害などは、ほとんど後遺症に数えられていないという。

 いったいどちらが正しいのであろうか、欧米の研究が正しければ日本の治療方針の根拠がなくなるばかりでなく、脳ドックそのものの存在意義が問われてしまう。そもそも今になって未破裂動脈瘤の大規模調査を行っているということは、科学的根拠がないままに脳ドックが行われ、治療が行われていたということか。
 

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