2008年12月19日金曜日

ドゥダメルとアルゲリッチ

 ベネズエラでホセ・アントニオ・アブレウという人が「子供を犯罪から救い、善良な市民に育成し、社会の発展に寄与する。この目的を達成するための最良の手段は音楽、しかもオーケストラのクラシック音楽である」との信念のもとに子供に無償で楽器と指導を提供する全国青少年交響楽団システム財団を設立した。1975年に11人の子供からスタートしたこの活動は現在、人口2600万人のベネズエラに、全国30カ所、約130のユース・オーケストラ、約60の子どもオーケストラがあり、26万5000人の子どもたちがクラシック音楽に参加するまでになった。

 そのオーケストラの頂点に立つのが10代後半から20代前半の200名で構成されたシモン・ボリバル・ユース・オーケストラであり、頂点に立つ音楽家が1981年生まれの若き指揮者グスターボ・ドゥダメルである。 ドゥダメルは第1回グスタフ・マーラー国際指揮者コンクールで優勝し、クラウディオ・アバドやサイモン・ラトル等から評価され、一躍注目を浴びる存在となった。2007年には、ローマ教皇ベネディクト16世の80歳を記念する公演でのドヴォルザークの「新世界より」が、全ヨーロッパにテレビで生中継された。

 そのドゥダメルとシモン・ボリバル・ユース・オーケストラに世界一有名なピアニストと言ってもよいマルタ・アルゲリッチが加わってのコンサートが今夜あった。
 第一部はピアノがアルゲリッチ、ヴァイオリンとチェロがカプソン兄弟でのベートーヴェンの三重協奏曲が演奏された。実は私はこの曲がよく分からないのである。だからソリストたちがきれいな音を出しているなとは思っても感動というわけにはいかなかった。
 第二部はマーラーの交響曲1番であった。実はこの曲は第3楽章以外は好きでない。しかし、若さが爆発するような演奏で、多くの聴衆がスタンディング・オベーションを送っていた。

 しかし、彼らの真骨頂はアンコールにあったのだ。こんなに楽しいアンコールは初めての経験だ。アンコールの1曲目はラテン・ムード満点の何度も聴いたことがある曲だが、誰のどういう曲か思い出せなかった。2曲目も聴いたことがある。この2曲の演奏は体を大きく動かし、楽器を回したり、2曲目に至っては客席まで降りて来て演奏した。これは彼らにしかできない演奏だろう。どちらも南米の作曲家によるものだと思ったが、半分違っていた。帰り際に見た張り紙でアンコールの第1曲目はバーンスタインのウェストサイドストーリーの「マンボ」だった。2曲目はヒナステラの曲でこちらはアルゼンチンの作曲家である。
 場内騒然となったところで、最後のおごそかな曲。この3曲目は歌詞さえなければノー・プロブレムであり、この曲が演奏されると終了だと分かる曲であった(ヒントNHK)。

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