2007年10月14日日曜日

用心棒日月抄

アマゾンのカスタマーレビュー風に

用心棒日月抄
★★★★
By tockng
 「用心棒日月抄(ようじんぼうじつげつしょう)」は藤沢周平の人気作である。赤穂事件の浅野と吉良方の争いに主人公がまきこまれるのが面白さの要因のひとつであると思う。ただ、どうも今ひとつ納得できないところがある。それは由亀のことである。主人公、青江又八郎は家老の悪だくみを知り、許婚の由亀の父に話す。しかし由亀の父はその一味であり、後ろから切りかかられ反射的に由亀の父を切り脱藩し江戸で用心棒稼業をする。非は由亀の父の側にある。しかし、自分は許婚の父を殺した仇である。家老が送ってくる刺客と死闘を繰り広げながら、又八郎は由亀が仇討ちに来るのを待つ。由亀が来ればおとなしく仇を討たれるつもりでいる。
 で、結局家老と敵対する側の力が強くなり、又八郎は藩に呼び戻される。由亀は又八郎のただ一人の家族である祖母といっしょに暮らしていた。やがて家老は失脚し又八郎は由亀と結ばれてめでたしめでたし、となる。
 由亀には葛藤はないのだろうか、いくら父が死の間際に又八郎を頼れと言ったということにはなっていても、なんだかなあ。由亀はあくまでも仇討ちに行くべきだろう、仇討ちの場でどうしても自分には討てませんと泣き崩れ、主人公と結ばれるという展開(ちょっとくさい展開にはなるが)は考えられなかったのだろうか。
 それと、一時吉良方について動いていた魅力的な小唄の師匠(世を偽る仮の姿であるらしい)、おりんという女の正体が明らかにされないまま終わっている。その後のシリーズでまたおりんを出すつもりだったのかも知れないが、結局2作目にも出てこない。

 元々は月刊誌の連載ものだから、あとからああすればよかったと思っても改変するわけにはいかないだろうけどね。まあ、面白かったからいいか。

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