2008年3月16日日曜日

五大捕物帳

 捕物帳の世界で五大捕物帳というのがあるのを初めて知った。「半七捕物帳」、「銭形平次捕物控」、「人形佐七捕物帳」、「若さま侍捕物手帖」、「右門捕物帖」がその五大捕物帳ということになるらしい。この内、「右門捕物帖」は現在絶版で古本以外では入手できない。
 岡本き(このきはワープロに入っていない字)堂の「半七捕物帳」は宮部みゆきが「わたしにとっては聖典みたいなもので、本が傷んでしまうくらい読み返しています。」と絶賛しており、私も全6巻読んだ。淡々とした飾りのない文章だが、江戸情緒がたっぷり入っている。主に大正時代に書かれたものであり、江戸時代を直接に体験している人も多かった時代である。確かに名作だと思う。
 それ以外で読んだ五大捕物帳は横溝正史の「人形佐七捕物帳」だが、これは現在抜粋版しか入手できない。抜粋版なので名作を集めたものである。ただ、この「人形佐七」は生活のために書いたものらしい。戦前の探偵作家は探偵小説以外は書かず、横溝正史は捕物帳を書いたことに劣等感を持っていたようだ。「人形佐七」はあまり江戸情緒はなく、トリック中心の小説である。好きで書いたものでないせいか、「半七」に比べると数段劣るように思う。

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