2008年7月21日月曜日

祈りと呪い

 夏向きの話をしましょう。
 
 2005年7月に権威のある医学雑誌「ランセット」に冠動脈疾患の患者に対して祈りが効果があるかどうかの論文が掲載された。祈りは患者と医療担当者には知らされずに、世界中のキリスト教徒、ユダヤ教徒、仏教徒、イスラム教徒たちによって行われた。その結果は祈りを受けないグループよりも「二段構え」(病気が良くなるように祈るグループが成功するように別のグループが祈る)の祈りを受けた患者たちは「6ヵ月間の死亡率と再入院率が他の患者よりも30%低く、統計的に意味がある」ということだった。

 この話を知ったとき、その逆はどうなのかと思った。つまり病気が悪くなるように呪うということだ。しかし、そういう試験は倫理的に許されないので決して行われることはなく、呪いの効果に関する論文が発表されることはないだろう。

 30歳台で2人の子供をつれて離婚した女性がいる。離婚したが、元の夫の母親との付き合いが続いている。というより、その人と縁を切ることができない。その女性の話によると、義母は不思議な能力を持っているという。まず、義母はその女性に子宮がんができているから病院で検査を受けるようにすすめた。最初の病院では子宮がんはなかった。それでも義母がしつこく言うので他の病院に行ったが、そこでも子宮がんは見つからなかった。3番目に大学病院に行き、そこで早期の子宮がんが見つかり治療を受けたそうだ。
 義母は自分に逆らうようなことをしたら、呪いをかけるという。義母にだまって実家の母のところに行くと決まって実母の体調が悪くなるらしい。呪いをかけられるのがこわくて縁を切れないということなのだ。

 呪いというのはそれを信じていて、誰かに呪われたと思った瞬間から効くものだ。不安になり、何か良くないことがあると呪いのせいだと思う。これが呪いが効いているということだ。呪いというものをまったく信じていない人や、信じていても呪われたということを知らない人には効かない。そういうものだと思う。この女性の場合、子宮がんは偶然だったのか、あるいはそういうものが分かる能力が義母にあったのか、どちらにしてもそういうことがあったために、義母の呪いの力を信じてしまい、結局呪いが効くようになってしまった。

 祈りの効果も大勢の人間が祈り、さらにその祈りが成功するように祈ってやっと統計的に意味がある結果が出たわけだ。一人の人間が呪いをかけて効果が出ることはないだろう。

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